山の音 1954

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山の音山の音 1954

監督: 成瀬巳喜男
原作: 川端康成
出演: 山村聰, 原節子, 上原謙,

この川端康成原作の山の音は小説で読んでいたがストーリーは忘れていた。そして原作とは違う結末になっていることをあとで知った。
小説と同じく話の中心は、信吾の老いと息子の妻菊子に対する恋情は変わらない。そして菊子が、子供を身ごもったが堕胎した話は変わらず。

小説ではその後菊子が義父の信吾に気兼ねをしていたのかまた実家から帰ってきた。しかし実際に夫の子供を堕胎した事実からすれば、菊子と修一の夫婦生活は終わっていた考えた方がよく、映画の結論は原作にはないがそうなるのが自然と考えてもいいのだろう。
小説では、終わりに菊子の義父信吾に対する心遣いを解放する、息子修一の言葉通りに、菊子を自由にすると信吾に言わせたことが、菊子の離縁を予測させるのである。

映像、演技は非常に綺麗で丁寧に作り込まれており、素晴らしい作品であるが、小説の山の音のような深い魅力がないように思える。これは原作と異なるストーリーであったことが、この映画の評価を下げているように思える。小説は川端康成の作品の中でもベストスリーに入る名作と評価されていることからだろう。そして題名の山の音の逸話が出てこないし、最後の天からの音もない。それが見る者にとって物足りないと感じられるだろう。

原節子は、永遠の処女と言われ戦前から戦後にかけて絶大な人気を誇ったのだが、僕にはその魅力がわからない。この作品でも僕のイメージは線の細い美人の菊子であるが、原とはイメージが少し違う。山村聰を見つめる目はもっと実の父に甘えるようなものでないといけないと思われるのだが。
上原謙は、2枚目俳優で有名だったが、ここでは酔って嫁をいじめるだけの悪役になっているのも残念である。



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