死の棘 1990

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死の棘

死の棘 1990

原作: 島尾敏雄
監督, 脚本:小栗康平
出演者: 松坂慶子, 岸部一徳, 木内みどり

1990年 カンヌ国際映画祭 審査員グランプリ
日本アカデミー賞主演男優賞・主演女優賞

松坂慶子がこんなに演技が上手いなんて知らなかった。映画を見始めてすぐに、彼女の話し方がすごい。今まではない話し方である。

この映画は、小栗康平監督作品として興味があって見たのだが、後で調べてみてこれは現実にあった話を題材にしていると知ってまたびっくりである。
この映画の原作の死の棘を書いた島尾敏雄とミホ夫妻を描いているのである。二人の狂気の世界を描いているのだが、不条理な出来事ばかりだが、なぜかその世界に引き込まれてしまう。
妻の狂気とそれによりそう夫。しかし夫の中にある狂気も次第に広がっていく。最後に二人で精神病院に入り、その中でも妻が自殺していないかと夫が竹竿で貯水槽を探る姿にゾクッとしてしまう。

この映画の最後は二人とも持続睡眠療法に入る。私が眠ったら寂しくない?寂しい。じゃ、んと騒いでやる。二人とも狂気の世界にあり、その世界は二人の世界である。ただ夫の狂気は狂気とも言えず、妻ミホとの不思議な世界に浸っていたいためのものかもしれない。その不自然な狂気の世界こそが、この夫婦の深淵だったりするのである。

この映画を好きというひとと嫌いというひとはかなり分かれると思う。それは作品をどのように描くかという観点でみれば素晴らしい出来である。やっぱり小栗康平監督らしい作品なのである。

梯久美子の狂うひとは、この原作と島尾敏雄・ミホ夫妻の評論である。
これには、島尾敏雄・ミホ夫妻のなり初めから、島尾敏雄の浮気の真実そして夫婦生活を明らかにしている。そこにも驚きの事実が隠されいてる。この評論には、この死の棘に隠された不思議な世界の謎をとく鍵があるのかもしれない。

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