東京物語 Tokyo Story 1953

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東京物語 東京物語 Tokyo Story 1953

監督: 小津安二郎
出演: 笠智衆, 東山千栄子, 原節子, 杉村春子, 山村聰

1937年日本公開のアメリカ映画、明日は来らずを元にこの映画は作られている。以前に見た時は、映像も傷だらけ本当に古い映画という印象があったが、デジタルリマスターされた映画は本当に綺麗で映像の美しさが復活したという実感がある。

年老いた夫婦周吉ととみが成長した子供たちに会うために上京する旅を描いている。
その年老いた夫婦が思ったのは、やっぱり老い先短いので、遠くに離れた自分たちの子供をもう一度見ておきたかったのである。
ところが子供たちは、自分たちの仕事の忙しさにかこつけ、熱海旅行に送り出したり、東京観光させて、子供たちが自ら関わらない。しかし次男の嫁紀子が優しく二人に接する。
そして老夫婦は尾道に帰るが、妻とみは危篤となる。子供たちは尾道に向かうが、長女の志げは、長男の幸一に喪服の用意をするかどうかを相談。母の最後には紀子とともに3人は間に合うが、大阪にいた三男の敬三は間に合わなかった。
志げは、葬式が終わって、4女の京子に母の形見として着物をもらいたいとその場で話す。子供たちはその後東京に戻るが、しばらく紀子は残る。
そして周吉は、紀子に、次男が死んで八年も経っているので、とみが言っていたように、もう自分のことを考えた新しい人生を送った方が良いと話す。紀子は泣きながら、自分の中から夫が次第に消えていくのを実感してそれに対して罪の意識を持っていると泣きながら告白する。そして紀子も東京に戻る。最後に尾道の景色と列車が映し出され、悲しみを抱えながら明日を生きて行く人々の情感が清々しく伝わって来る。

世知辛い長女の志げであるが、昔から今の時代も変わらないように子供とはこうしたものである。再びの子の映画を見た時、自分も親を送る歳になって、確かに自分もその通りだと思ってしまった。こうした親と子供の情はいつの時代も変わらないものであり、しみじみとその本質が描かれている。そして戦後すぐの物語であるが、戦後の傷跡をまだ持っている紀子に新しい人生を歩むように促すのも、この映画テーマであ。

なんとも言えない子供の親に対する情があり、しかし親の気持ちと違って子供と親が離れいく状況が自然に描かれている。逆に亡き息子の嫁の方が親切でもある。周吉が紀子に、むしろ本当の子供より、あなたの方がよっぽど良くしてくれた。ありがとう。としみじみにお礼を言う。ただ紀子も次第に、夫へ思いが自分の心の中から徐々に薄くなっていくのを感じてすまないと義理の父母に対して思っていたことがひしひしと伝わって来る。

これも本当に真実のように心に伝わって来る。戦後の日本における、戦争の傷跡を忘れ、明日を見ていこうと言う清々しいメッセージもあり本当に名作である。この映画は見る者が年をとるに連れ本当の価値がわかってくる映画でもある。

小津安二郎のこの映画のロー・ポジションは非常に有名である。カメラを固定して人物を撮る「小津調」と形容される独自の演出技法がある。しかし僕には日本のような狭い部屋で映画を撮るにはこのアングルしかなかったのかもしれないと思う。そしてセリフを言う時の一人一人のアップは正面からインタビューのような語りかけである。それにしても老夫婦の二人の曲がった背中が綺麗に映し出され、人間の老いが美しく表現されている。

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