葛城事件 2016
監督, 脚本: 赤堀雅秋
出演: 三浦友和, 南果歩, 新井浩文, 若葉竜也, 田中麗奈
圧倒的な映画、脚本の力で、観客は異常な世界に入り込む。
しかしは、それはごく普通の家族の姿のようにも思えるのだが、しかし何かが違う。父も母もそして子供達も。なにかおかしいのである。
死刑判決を受けて稔の妻となった星野順子も、普通の人ではない。
見ていてそうしたことが気がついて、見ているものになにか居心地が悪さ、不快感を感じるのに見続けずにはおえない強い力がこの映画にはある。
どこかが狂っている。いや映画に出てくるほとんどの人たちが狂っている。家族全員、そして獄中結婚をした星野も全てが精神的に病んでいる。それがわかりながら、最後に結末に向かっていくのが非常に見ていて苦しい。
葛城にとって理想の家族のありかた、自分が心で描いた家族の将来像がどんどんと崩れていき、全てが崩壊する。しかしそれは最初から砂上の楼閣だった。妻は最初から夫のことを愛してなかった。新築の記念に植えられたミカンの苗木は、家庭が崩壊しても大きな木になって庭にある。
どこにでもある家庭ではないしかし、監督が言うように、この物語は対岸の火事ではなく、我々の地続きにある家族の話である。確かにそうだが、赤堀雅秋は静かに冷徹に家族の病的な姿をしっかりと描写している。
葛城清
父は家業を継いで、安定した生活？を得た人間。常に権威主義的に人や世間を批判する。自分が絶対的に正しいと思い込んでいる。
葛城伸子
最初から夫に愛情がない。
彼女はあまり家事をしない、というかあまり子育てもしてこなかったのだろう。家事もろくにできない。ニグレクトという言葉が合うのか、彼女がうつ状態ということだったのか。最初から精神状態に異常があったのだろう。
葛城保
彼は優等生でまじめであるが、人間関係はそれほどうまくできない。営業は得意でない。そして父からのプレッシャー、家族に対する負い目が彼を自殺に向かわせる。
星野順子
獄中結婚についても触れているが、まさに冷徹に獄中結婚した女性を見ている。婚姻関係を結んだ女性は、自分の信念、死刑反対、誰にも良心があるということだけで結婚。しかし彼に対する愛情は全くない。婚姻関係になっても苗字も変えない。
葛城稔
連続殺人事件を犯した彼は、父を非常に憎んでいるのだが、言葉に出てくるものは、全く父が話す口調と同じなのである。
一発逆転という言葉が非常に怖い。
この映画は、全ての出演者の演技が素晴らしい。演技だけでなく、客本も素晴らしくあまりのリアリティにびっくりしてしまう。
この映画は連続殺傷事件をもとに、家族背景は、附属池田小事件、殺人事件は土浦連続殺傷事件を参考にしているようだ。
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