4月は君の嘘 新川直司 月刊少年マガジン 2011

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aprilyourliecartoon.jpg4月は君の嘘 新川直司 月刊少年マガジン 2011

やっぱりこの漫画は泣ける。どうしてこんな意味がわからない題名なんだと思ったけど、最後にこの題名の謎が解けるのである。それも作者にしてやられた感である。でもそれが嬉しい。どうしてこれは少年漫画だったんだろうと思いながら連載を読んでいた。
音楽がからんで、3角関係の恋愛があり、悲劇的である。そして子供の頃からの夢がつながる。題材は素晴らしい。

有馬公生、宮園かをり、澤部椿、渡亮太の四人の関係が微妙なバランスで恋愛小説らしい構成である。

ピアノが弾けなくなった天才少年ピアニスト。母が死んでから、自分の演奏するピアノの音が聞こえなくなってしまう。それでもピアノが忘れられない。かをりと出会って突然、有馬公生の周りがカラフルになるのである。

宮園かをりよって、再度ピアノの演奏の舞台に立つ。ピアノ演奏の嬉しさを実感しながらも自分の中にある心の傷を克服できるのだろうか。でも宮園かをりは、偶然に有馬公生を自分の演奏に引っ張り出したわけではない。彼女の夢は有馬公生と一緒に演奏することだったのが後でわかる。 有馬公生の心の傷と母の死は、次第に宮園かをりの病気と重なり、彼の心の中に暗い影を落とすのだが、宮園かをりが必死になって彼の心の影を取り去るように努力する。あたかも自分の残り少ない命をかけて。

宮園かをりのヴァイオリンを弾く姿はこの漫画のハイライトでもある。本当に美しく音楽がなっているような描き方である。

相座凪との連弾は、どうした意味があるのだろう。人にピアノを教えることだけでなく、ピアノの演奏の楽しさを教えて、自分の心の葛藤からも抜け出すことができたのかも。そして、宮園かをりに一緒に演奏する楽しみを伝えて、もう一度一緒に演奏しようというメッセージだったのだろう。

公生が子供のころ飼っていた黒猫のチェルシーはどうなったのだろうか? 母は本当に捨てたのだろうか?これは最後までわからなかった。

ストーリーの展開に使った選曲もなんだかすごい。有名な曲も入っているが、どうしてこの曲なんだろうと思ってしまう。特にベートーベン:ヴァイオリン・ソナタ第9番 <クロイツェル> 第1楽章、サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソや、クライスラー:愛の悲しみかなど。

最後のエピソードも素晴らしい。宮園かをりが有馬公生に贈ったものは本当の自分の思いである。

本当にこの漫画は少年漫画雑誌にはもったいないほどの恋愛ものである。アニメもあり、今度は映画が封切られた。映画の内容は少し原作とは違うが楽しみである。

新川直司の以前の作品の"冷たい校舎の時は止まる"も印象に残る作品だった。現在連載中のさよなら私のクラマーも楽しく読んでいる。

ベートーベン:ピアノ・ソナタ第14番 <月光> 第3楽章
ベートーベン:ヴァイオリン・ソナタ第9番 <クロイツェル> 第1楽章
サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ
ショパン:エチュード 嬰ハ短調 作品10-4
ショパン:エチュード イ短調 作品25-11 <木枯らしのエチュード>
ショパン:エチュード ホ短調 作品25-5
クライスラー:愛の悲しみ
クライスラー/ラフマニノフ編:愛の悲しみ (ピアノ独奏版)
スクリャービン:エチュード 嬰ニ短調 作品8-12
ドビュッシー:月の光
ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
チャイコフスキー:"眠りの森の美女"より「ワルツ」(ピアノ連弾版)
ショパン:エチュード ハ短調 作品10-12 <革命のエチュード>
ショパン:バラード第1番 ト短調 作品23

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サン゠サーンス: 序奏とロンド・カプリッチョーソ  イ短調  op. 28の決定版はやっぱりアンネ=ゾフィー・ムターのイエロー・ラウンジ ライヴにある曲だろう。