破戒 1962

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破戒 1962

監督: 市川崑
脚本: 和田夏十
撮影: 宮川一夫
出演: 市川雷蔵, 長門裕之, 船越英二, 藤村志保, 三國連太郎

この島崎藤村原作の破壊は、以前から読もうと思っていた小説の一つである。しかし部落差別問題を描いた小説として有名だったが、なんだか内容が暗そうで避けていた。市川雷蔵と市川崑のコンビの映画があるというので、これ幸いに原作を読まず映画を見ておこうという魂胆で見た。

非常に緊張感のあるシーンの連続である。そして観客はそのシーンに見入ってしまう。どこを取っても飽きさせない設定なのである。原作とこの破壊の展開は大きく違うのであるが、藤村が描いた明治三十年代当時と、戦後日本の映画とではこれほど違うものができるのだと実感できるだろう。

原作とは違うストーリーの展開である。映画では、主人公の瀬川丑松は、部落民の子であるが、父から部落民であることを隠して生きろと言われ、自分の出身を隠して小学校教諭となった。そして部落出身の猪子蓮太郎の書を愛読していた。しかし猪子蓮太郎が、自分の前に現れ、彼に協力を求めたが、自分が部落民であることを否定し、その誘いを拒絶する。猪子蓮太郎が倒れた後、彼は意を決して、自分が部落出身であることを生徒たちに告白して謝罪する。そして学校辞職し、猪子蓮太郎の後を継ぐ決心をし東京に向かう。

藤村志保は、この映画がデビューで、原作者と役名から芸名をつけた。
市川雷蔵のファンだから仕方がないかもしれないが、彼のこうした地味な瀬川丑松という役柄の演技も非常にいい。そして猪子の妻を演じる岸田今日子や、藤村志保の凜とした演技に感動してしまう。

また脚本の和田夏十と市川崑が作り上げ、猪子蓮太郎の妻に言わせる言葉がいい。
部落出だからというせいにしないで、つらい事も普通どおりに受けとっていただきたいの。生きるということはそりゃ苦しい事も多いと観念していただきたいの。
現実は、1962年当時はそうはいかなかっただろう。もっと実際部落出だからと血がにじむような苦しみがあったと思われるが。しかし世の中は傑出した個人によって変わるのではない。次第に世の中が自然に変わって問題が無くなっていくのだ。とその当時の言葉通りに問題は、今では本当に無くなっているのだろうか。
今でも、その場所を通るとここに住んでいる人たちは、という話を最近聞いたばかりである。

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