魚影の群れ 1983

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魚影の群れ 1983

監督: 相米慎二
原作: 吉村昭
出演: 緒形拳, 夏目雅子, 佐藤浩市

大間のまぐろ漁、そこの漁港に住む親子とその恋人を描いている映画。映画はかなり津軽弁まじりで喋っているので、慣れない人にはなかなか理解できないかもしれない。それでもこの津軽弁はマイルドだと思うんだけど。

この映画は以前に見たことがあったが、内容は忘れていた。ただ俊一の頭に釣り糸がからみ血が吹き上げたシーンを見て、あ、これは見たことがあると思い出した。
映画もストーリーではなくひとつのシーンだけを覚えていることがあるんだと考えさせられる。

緒形拳の黙々と漁師の仕事をこなすところがすごい。撮影もかなり苦労したと思うけど、こんなにリアルにマグロ漁を映すところがすごい。

小浜房次郎のマグロ釣りに対する執念は、釣糸が俊一の頭に巻きつき血だらけになるっても、マグロを釣り続け俊一のことを忘れてしまうくらいになる。房次郎が二十年振りに逃げた女房のアヤに再会するのだが、最終的によりを戻さなかったのだろう。そこは映画では出ていないが、その理由マグロに生まれて初めて釣糸を切られたからだろうか。小浜房次郎の人生がマグロ漁に左右されているのである。
夏目雅子はいつも体当たりの演技である。なんの計算もなく、その役に向かって演技していく。そこが魅力的なんだな。緒形拳は円熟した演技である。あれだけ抑えた演技の中で迫力のある漁師を演じている。

小浜と俊一の最後の'会話がいい。死にかけた俊一が漁師は、なんぼ楽な商売だべかと話すと小浜が、そうだ漁師には地獄か極楽かしかない。大博打うちだ。そしてトキ子に俊一が死んだことと俊一が最後に男だったら漁師にしますといっていたことを告げる。小浜房次郎の漁師としての生き様がはっきりとわかる。

最初と最後のトキ子の言葉がいいんだ。海が好きだ。そして最後に最愛の人を海で亡くしてしまう。そして生まれてくる子供が男だったら本当に漁師にするのか。物語の起承転結がきっちりと決まっている。そして見終わった時の余韻が深い映画である。

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