Paris, Texas パリ,テキサス 1984

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Paris, Texas パリ,テキサス 1984

監督: ヴィム・ヴェンダース
脚本: サム・シェパード, L・M・キット・カーソン 
音楽: ライ・クーダー
出演: ハリー・ディーン・スタントン, ナスターシャ・キンスキー, ハンター・カーソン, ディーン・ストックウェル

1984、第37回カンヌ国際映画祭、パルム・ドール受賞
テキサスを一人放浪していた男が、弟と再開し、子供に再開し、妻と出会いその別れを描いたロード・ムービー。

パリ,テキサスは、僕も題名を見たときは、パリとテキサスを舞台にした映画かと思ったのだが、テキサスのパリという町だった。でもこの町は映画の中でも写真だけで実際に映像としては出てこないのだ。
この映画がロードムービーの名作とされるのだが、内容は全く身勝手な男の話である。
結局この映画はトラヴィスがDVをして、妻ジェーンから殺されそうになり、ショックで4年間彷徨っていた。ジェーンは子供ハンターの養育を放棄して、風俗で働いていた。ハンターは弟のウォルトとアン夫婦に大事に育てられていたが、トラヴィスは、ハンターを連れ出して、ジェーンに会いに行って、彼女にハンターを渡して去って行く。
この話のどこがいいんだろう。結局はDVをして自分を殺そうとした妻にどうしても会いたかっただけのような話である。

確かに、映像はすばらしいし、ライ・クーダーが奏でる寂しげなギターの響きもいいんだけど。

まず色彩については、
赤がすごく目立つ。
最初のタイトルも赤い文字で書かれてある。最初に現れたトラヴィスが赤い帽子をかぶっている。テキサスの青い空とのコントラストがいい。そしてウォルトは黄色い帽子はかぶっていた。印象的だ。
そしてトラヴィスが入った病院の中は、緑色である。
ハンターがトラヴィスに打ち解けると二人とも赤い服を着ている。
そしてジェーンは最初は赤いセーターに赤い口紅が目立つくらい強い。

列車やトラックの音、そして飛行機の音がうなるようにうるさいくらい大きいのはどういう効果を狙っているんだろうか。確かにバックに流れるギターの音が逆に心地よく感じる。

それほどナスターシャ・キンスキーの演技がいいとは思えない。当然客であったトラヴィスが自分のことを語り始め、夫であることがわかるところの彼女の反応、態度、仕草の変化がこの映画の見せ場あでもあるのだが、
ナスターシャ・キンスキーの表情もやや固めで動きも少ない。
金髪と赤い口紅をした彼女が、すこし俯き加減でちょっと作り笑いをする。そこは可愛いんだけど、それだけなんだな。

もしマジックミラーから見られている仕事を数年続けてきたのなら視線を意識してもっと風俗のプロとしてのポーズをとるような仕草をするはずだし、トラヴィスが話し始めてから気づいたときの驚き、困惑などがうまく表現できていないように思えるのだが。
そこが表現できていないのは、ナスターシャ・キンスキーだけでなく、監督のヴィム・ヴェンダースにも、観客にジェーンをどのように見てもらいたいのかはっきりしていなかったのではないだろうか。

トラヴィスが、ジェーンに自分の気持ちを語るシーンはすばらしい。一緒に暮らしていたときの気持ちの変化を語るのだが。最初はジェーンはマジックミラーをずっと見ているのだが、トラヴィスはそれに背を向けて語っている。そしてトラヴィスと分かり、彼の顔が見えると、ジェーンはマジックミラーの下に座り込みマジックミラーに背を向けて話をする。トラヴィスはマジックミラーを覗き込んでいる。
一つのアングルで二人の表情がうまく表現されている場面である。特にトラヴィスの表情がいい。

ジェーンは、ずっと頭の中で、想像で、トラヴィスと話していたと語るのだが。どの男もあなたの声のように聞こえたというのはどういう意味だろう??本当にそうだったのだろうか。
この二人の会話を聞いても二人の愛の形がどんな風だったのかあまり見えてこない。

トラヴィスが次第に自分の生い立ちをハンターに語る。自分の母と父の話まで。最初はパリス、テキサスで会った。ことをパリであったと冗談をいいだしたが、次第に父は、母がパリの出身であること夢見た。そこには、自分の父と自分を重ねているように思える。


トラヴィスは、ハンターをヒューストンの有名なホテル、メリディアンホテルに残した。このホテルは、エールフランスによって設立されたフランスの有名ホテル。トラヴィスは父について語っていたが、トラヴィス自体も本当はパリに憧れ、ジェーンをパリにふさわしい女性にしたかったのかもしれない。

ジェーンは、仕事では指輪をつけていなかったが、ハンターに会うときは左手の薬指に指輪をはめていた。どうしてだろうか?まだトラヴィスのことが好きということか。

どうして4年間彷徨っていたのか。最後にジェーンに語るのだが、
自分はもう何も感じない。ただ眠りたいだけだ。自分は遠くに行きたいと思った。誰も自分を知らぬ、深く広いところ。言葉もないところ。名もない町、名もない通りへ。自分の形跡が消えるまで走った。

それでも4年間彼はどうしていたのか
本当に記憶はなかったのか?ご飯は食べていたんだろうか?ここは本当に疑問が残るのだが。これは映画の設定だからいいか。


最終的には非常に考えさせられた映画だったが、あまり感動はないし、名作とも思えないのは最初に指摘したとおり。

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