さよなら渓谷 2013

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さよなら渓谷 2013

原作: 吉田修一
監督: 大森立嗣
出演: 真木よう子, 大西信満, 大森南朋, 鈴木杏, 井浦新

この映画は、映画のプロモーションが失敗している。この異様なカップルに対する疑問が最初からないからである。

キャッチコピーが、ごく普通に見える夫婦。だがふたりは残酷な事件の被害者と加害者だった―。これは最低なキャッチコピーだ。
本当に残念だった。どうしようもないほど被害者は不幸のどん底におちた。加害者の一人はその彼女に寄り添う。意外なレイプ事件の加害者と被害者のカップル。その意外性に映画の中で気づくと観客はそこで驚くはずだったのに。

尾崎の妻が、尾崎に不利な証言をして、警察に面会に行く。そしてなんとも言えない優しげな表情をしている。尾崎も不利な証言に何にも文句を言わない。この何とも言えない違和感が素晴らしい。

最後のシーンには、彼女のどうしようもない抵抗感がでている。
幸せになるのが、許せない。ただこれには水谷夏美が少し幸福を感じたということに希望がある。

真木よう子の演技がひかる。とくにぼんやりと視線を向けている演技が光っている。何とも物憂げで、感情を押し殺した表情がいい。

彼女の言葉、どしんと見ている者に応える。
どうしてもあんたが許せない。
あたしが死んで、あんたが幸せになるなら、あたしは絶対死にたくない
あなたが死んで、楽になるなら私は、あたしはあなたを絶対に死なせない。
こんなことで楽になろうとしないでよ。

二人の雑誌記者渡辺 一彦と小林 杏奈は、この映画の狂言回し的な役割で尾崎の過去を追って行くのだが、やや主人公の気持ちを代弁することが多すぎる。もう少し距離を置いた役割ならもっと味わいのあるストーリーになったような気がするんだが。
渡辺一彦を演じる大森南朋のなまった体の映像は悲しすぎるのだが、リアリティがある。
尾崎俊介を演じる大西信満は、何とも言えない押し殺した表情をずっとしている。そこに存在感があるようなないような雰囲気が漂っている。

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