The Angels' Share 天使の分け前 2012
監督: ケン・ローチ
出演: ポール・ブラニガン, ジョン・ヘンショー, ガリー・メイトランド
グラスゴーが舞台。スコットランドのコメディ。やっぱりスコットランドの英語はなかなか聞き取りにくい。登場人物にはおもしろいキャラがいっぱい。特に冒頭からこの映画の道化役のアルバートが本当に面白い。言われたら逆のことがしたがる。確かにどこかにいるやつだ。
ロビーは育った環境のせいでケンカ沙汰の絶えない若者。どうしても暴力に手を染めなくてはいられない状況だが、今度暴力沙汰を起こしたら刑務所に何年も入れられる。彼女には自分の子供できたしなんとかこの環境から逃げ出したい。
彼は、奉仕活動のリーダーのハリーからウィスキーの手ほどきを受ける。そして自分のテイスティング能力の才能に気づく。
ウィスキーを作る話かと思ったら、盗む話だったのは驚き。
どうしてこのたぐいイギリスやスコットランドの映画は、一発当てる映画が多いんだろう。トレインスポッティングにしても、ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズにしても。
キルトをまとった3人の男が警官に中を見られるという笑える場面もある。それにしても僕もロビーのコメントと同感で、どうしてキルトの前に袋をかけるんだろう。確かに歩くと揺れて痛いと思うんだが。
今回もアメリカ人、それもBも帽子(レッド・ソックス)をかぶったコネティカット出身の人がだまされて別のウィスキーが混じったウィスキーを買わされている。
ロビー役のポール・ブラニガンのイメージは、ポンヌフの恋人のドニ・ラヴァンに似ている。すこし暗いイメージがあって、冴えないところがありながら何か若くて青い光を放っている
TASC (talk after serious crime)のプログラムの紹介も、この映画のポイントだろう。ロビーはこのプログラムで自分の犯した罪の深さを知る。
全体的には、コメディでありながらヒューマンな所を十分に持っていて、最後のさわやかなエンディングにつながる。
スコッチウィスキーが好きな人やイギリス映画が好きな人にとってはA級の作品。
ウィスキーは熟成して行くと2%づつ量が減って行く。当然アルコールなどが蒸発して容量が減って行くのだが、それを天使が飲んでいるということから天使の分け前と言う。
冒頭の言葉で、by the skín of one's téeth がある。
これはかろうじてという意味。かろうじて刑務所に入るのを免れたということ。
映画サイドウエイと同じように吐器に吐いたウィスキーをすべて飲むシーンもある。
ウィスキーのブラインドテイスティングでは、クラガンモアかグレンファークラスの選択が問題になるのだが。
コメントにはアメリカンオークとヨーロピアンオーク(シェリーオーク)の両方の香りがするとあるがこれがわかるとはすごい。
クラガンモアが正解。
クラガンモア
クラガンモアはスペイサイドのモルトだが、例外的なブランド。リンゴと梨の風味は一生懸命に感覚を働かせないとなかなか掴めない。いろいろな要素を持つ奥が深いウイスキーで、ある意味ではタリスカー、ラガヴーリンやラフロイグなどよりも難解なブランドだと言える。
グレンファークラススペイサイド
仕込み水に背後のベンリネス山の良質な軟水を使用。
シェリー樽とホワイト オーク樽を混合で使用する。
独自の個性を大切にし、ブレンダーへのカスク売りを一切行っていない。
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