Thérèse Raquin 嘆きのテレーズ 1953

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Thérèse Raquin 嘆きのテレーズ 1953

原作: エミール・ゾラ
監督: マルセル・カルネ
出演: シモーヌ・シニョレ, ラフ・ヴァローネ, ジャック・デュビイ

エミール・ゾラの1867年の小説テレーズ・ラカンを原作としている。

舞台はリヨンである。
最初のシーンは、ペタンクを母と一緒に見ていたはカミーユは、テレーズがローヌ川を見ていたのを責める。
テレーズは、生地屋を営んでおり、夫のカミーユはマザコンで、何でも母に面倒を見てもらっている。テレーズは小さい時に両親を亡くし、おばのラカン夫人が引き取り育てた。カミーユとは従兄弟同士であるが、おばの意思で結婚することになった。姑になったラカン夫人は息子を溺愛しておりテレーズを冷たく扱っていた。

カミーユが夜の競馬ボードゲーム の会に連れてきた逞ましいトラック運転手のローランと出会う。そしてローランは、テレーズを好きになり、次第に二人は恋仲になる。

ローランは、テレーズに駆け落ちをしようと持ちかけられるが、それを拒否する。ローランはテレーズと恋仲であることをカミーユに告げる。カミーユは別れる前に一度パリに行こうテレーズを誘い列車に乗る。

ローランはそのことを聞き、テレーズを追う。マコンで追いつき列車に乗る。
そこでカミーユを言い争いになり、列車から突き落としてしまう。
テレーズは、カミーユが列車から落ちたのを事故に装う。テレーズは夫の死体を目撃したり、警察から尋問を受けたりしたことを理由にローラントは疎遠になる。
ラカン夫人は、息子の死を聞いて発作を起こし、以後全身不随になってしまう。しかし聞いたり,見たりすることはできて、いつも鋭い眼でテレーズを睨んでいる。

列車で乗り合わせた戦争帰りの水兵リトンは、カミーユの死を知って、テレーズを強請るようになる。テレーズはローランに相談する。リトンは、二人に会う前に、事件の真相を書いた手紙をホテルの女中に渡し自分が戻らないときはそれを送ってくれと頼む。テレーズは鉄道会社からおりた金を水兵に渡して念書を書かせる。水兵はその直後トラックに追突され死んでしまう。死ぬ前に手紙、手紙と叫んで。

映画は淡々と進んで行く。テレーズのもくろみは最後までうまく行くかのように思えるのだが、最後最後に思わぬことが起きてしまう。この運命論的な所は後の死刑台のエレベーターにも使われている。
映画はこの話を客観的に描いており、観客にストレートに事実が伝わってくる。そこが素晴らしいのである。
シモーヌ・シニョレの常にさめた冷たい表情がいい。そしていつも落ち着いている仕草がこの映画のキィである。
テレーズが飼っている黒猫も象徴的で、テレーズの運命を暗示しているのかもしれない。
最初にテレーズが眺めるローヌ川、そして夫の死体の確認に来た、列車が通過する丘のシーンが印象的である。テレーズが住んでいる家もフランスならではの作りである。階下が生地を売る店になっており、螺旋階段を登ると住居になっている。ローランが住んでいるホテルの外観も奇麗なショットである。


テレーズがどれだけ計算高い女なのかわからないが、かなり彼女の心の中で計算された出来事が起きて行く。ローランが夫を殺したのも計算のうちだろう。その後、二人の中はうまく行かない。テレーズは、夫の死体を目撃して、警察から厳しい尋問を受けたせいだと言っているが、実際にはそれほどローランを愛しているようには見えない。どちらかと言えば、邪魔だった夫がいなくなればそれで良かったようだ。
そこに戦争帰りの元水兵が来て強請り始める。テレーズの計算が狂い始める。再度ローランに相談し、鉄道会社から得たお金で何とか解決したようになるのだが、運命はテレーズの方には向いていないのである。


リヨンからパリ行きの列車に乗り、ブルゴーニュ地方のマコン、シャロン、ディジョンの駅名がでてくるのが興味深い。
ペタンクや、競馬ボードゲームは当時のフランスを現しているんだろう。

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