天国と地獄 High and Low 1963

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天国と地獄 High and Low 1963

監督: 黒澤明
出演: 三船敏郎, 仲代達矢, 三橋達也, 香川京子, 江木俊夫, 佐田豊, 山崎努, 田崎潤, 志村喬, 木村功, 石山健二郎


これは、黒澤明がエド・マクベインの小説キングの身代金に触発され映画化したことは有名。子供の誘拐を扱った事件である。

誘拐犯は、自分の住んでいる部屋と高台にある権藤の豪邸との差を感じて天国と地獄の差があると思った。そして誘拐事件を思いつく。
ナショナルシューズの重役の権藤は高台の豪邸に住んでいた。そして誘拐犯から身代金の請求の電話がかかる。実は、自分の子供ではなく、運転手の子供が誘拐されいた。権藤が会社の実権を握る為に工面した金を身代金のために払わなければ行けなかった。ここで権藤の心が試される。権藤は苦悩するが、最後に運転手の子供のために身代金を用意することを決めた。
誘拐犯との交渉の場面は、この映画が原点かもしれない。犯人からの電話。警察が犯人にわからないように家に入る。逆探知、そして犯人との交渉。身代金の渡し方は特に重要である。警察と犯人の戦いは最高潮に達する。この映画はそこが素晴らしい。列車内の電話を使って連絡をして、突然鞄を落とす場所を指定する。列車から鞄を落とすシーンはまさに迫力がある。
子供は無事に返されるが、身代金を払ったため権藤は破産する。
誘拐犯の竹内が権藤と面会して最後に気づいたのことは、権藤と竹内の違いである天国と地獄は住んでいる場所ではなく、心の中にあることに気づく。最後のシーンは象徴的である。物質的な点で、天国と地獄を考えていた竹内銀次郎は、権藤と会って、本当の問題は心にあることに気づく。そして自分の心が地獄にあり、権藤の心が天国にあることを知ると自虐的な言葉を言わざるを得ないのである。

この映画は本当に印象的なシーンが多い。こだま号151系特急電車から鞄を落とすシーンである。犯人と子供がいるのが窓から見える。そしてあわてて鞄を窓から落とす。本当に緊張感が伝わってくる。そして白黒の景色の中に赤い煙が立ち上がる煙突が見えるシーン。マスキング合成で朱色を着色している。

戸倉警部らが、権藤の自己犠牲を賞賛し、犯人を捕まえるのを鼓舞するところは、確かにそうだが、あまりに権藤をほめすぎるのかと思ってしまった。

後半の場面で犯人が、権藤と接触する。権藤が靴のショーウインドウを見ていたら、竹内が声をかけるのである。僕はこれをみてあ、本当はグルだったのかと思ってしまった。ところが実際はそうでないのである。あそこは、僕の心が曲がっているのか、ストーリーを深く読み過ぎたのだろうか。それにしても紛らわしいシーンを入れない方が良いと考えるのだが。

戸倉警部役の仲代達矢は、無難な演技である。やや仲代達矢くささが全面に出過ぎとも思えるが。
インターンの竹内銀次郎を演じている山崎努が素晴らしい。最後の権藤と面会して話をするところが迫力のあるシーンである。
権藤の息子・純役で出た江木俊夫は、オーディションで選ばれた。後にフォーリーブスの一員になるとは思わなかっただろう。

この映画を見て、いろいろな誘拐事件を思い出した。人の苦しみを利用したどれも卑劣な犯罪である。どの事件でも成功していない。誘拐犯は必ず捕まるということである。そう言えばグリコ・森永事件は一体なんだったんだろう。これは未解決だし、誰も死んでいないんだが。

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