眠狂四郎悪女狩り 1969

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監督:池広一夫、脚本:高岩肇、宮川一郎、音楽:渡辺岳夫
出演:市川雷蔵、藤村志保、江原真二郎、久保菜穂子、松尾嘉代、小池朝雄、朝丘雪路、他

眠狂四郎シリーズ第12作目、市川雷蔵の遺作になる。池広一夫監督では第3作目、脚本を手がけた高岩肇も三作目である。前作の脚本の星川清司が8作を担当して、その次に多い。池広一夫は、円月殺法のシーンで初めてストロボ撮影で残像の効果を使った監督でもある。
大奥総取締の錦小路を演じている久保菜穂子は、池広一夫監督の時にはいつも出演している。この作品では、ひときわその怪しい魅力が光っている。朝丘雪路もちょっと出ているのだが、あまりストーリとは関係しない。藤村志保の小夜役もあまり重要な役ではない気がする。眠狂四郎のシリーズを通して眠狂四郎と藤村志保の役でのからみは全くない。どうしてだろう。
とりわけ、眠狂四郎が館に誘われるシーンはこの映画の中でも異色なシーンである。市川雷蔵が死期を悟り、どうしても入れたかったシーンらしい。眠狂四郎の周りを踊る白と黒色の烏に扮した人々。これは、雷蔵の死期が近いことを暗示したシーンなのだろう。鏡に映った己の姿を斬り、後ろに隠れていたくの一を殺すのだが、これも雷蔵の死を意味しているようにも取れる。
今回のテーマはもう一人の眠狂四郎を斬り、己が唯一の眠狂四郎であることを主張する映画である。最初は、眠狂四郎が二人いてはならんという定めはない。と言っていたが、最後に狂四郎は"今まで、眠狂四郎は何人いようと構わぬと思っていたが、その了見が変わった。狂四郎は一人でなければならん。"と言っている。雷蔵の眠狂四郎に対する強い愛着を感じるし、なにか遺言のようでもある。

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