斬る 1962 KIRU

  • 投稿日:
  • 更新日:
  • by
  • カテゴリ:

原作:柴田錬三郎
監督 三隅研次
撮影:本多省三
出演 市川雷蔵、藤村志保、渚まゆみ

三隅研次監督と市川雷蔵による剣三部作の第1作。三隅研次監督が目指す映像美を楽しむことが出来る。
最初のプロローグの藤村志保が覚悟した顔つきで登場するところから始まるシーンがすばらし。横から上から下からとカメラワークが変わる。静かに歩く足が映し出され、廊下が鏡のように足元の着物を映す。ふすまを開けるときの足の運びのためらいが素晴らしい。藤子を演じる藤村志保の顔の表情がポイントである。それに続く処刑シーンも幻想的で美しい。藤村志保の顔も死でいくのに笑顔すら見せ平穏で満足した顔つきで処刑をうける。
この映画には、すこし眠り狂四郎の雰囲気がある。やはり柴田錬三郎が原作者だからだろう。
川辺での決闘シーンでは、大胆に人間が真二つになる。これにはあの時代にしては大胆な演出だと思ってしまう。
高倉信吾には、三人の父と三人の女性がいる。一人は養父高倉信右衛門、そして実父、最後に大目付である。そして三人の女性が。母、妹そして田所左代。
お茶をする時に、じっと茶器に見入る高倉信吾の無邪気な姿がよい。うぐいすの泣き声があり、梅の小枝をとり最後に邪剣三弦の構えを出すこの対比がいい。
最後のシーンでは、高倉信吾は切腹していない。切腹をする前に見た母そして弟を守って死んだ田所左代の姿を思い倒れ込む。彼の切っ先に血糊はない。僕はここで死んでいないと思いたいんだが。公式にはやはりここで自害していることになっている。この話には本当は続きがあるといいな思う。高倉信吾は、今までの剣シリーズの主人公と違って、思い込んだ雰囲気がなくどこかにゆとりがあり生きている。眠り狂四郎と違う雰囲気がありこれもシリーズ化して欲しかった。

My Rating(評価): 14/20
アクセス数:22