私の男 2014

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私の男 2014

監督: 熊切和嘉
原作: 桜庭一樹
出演: 浅野忠信, 二階堂ふみ, モロ師岡, 河井青葉, 山田望叶


この映画や小説は何を描いているのだろうか。実存主義的な小説である。それも性の。近親相姦であっても本人たちがそこに生きる意味を見出すなら、そうなのか。

真っ暗な奥尻島のシーンから、北海道紋別の田舎町の寒い白い世界が描かれる。そして東京の雑踏、狭いアパートが描かれる。

天災による出来事がそうさせたのか、それとも二人の血の運命がそうさせたのか。
圧倒的な存在感のある花、彼女は自分の血と運命に従って生きる。それは北海道南西沖地震で生き残った経験がそうそせるのか、やっぱり彼女の中にある血がそうさせるのか。

映画の最後のシーン結婚式を翌日に控えた腐野花が婚約者の美郎、父の淳悟と3人で会食する場面が、小説では最初の章である。小説では時間が遡るように描かれている。

淳悟は花を自分の子どもとして、そして愛人として愛するのだが。最終的には花が求めたのか、淳悟が求めたのかがやや問題になるのだが、映画では描かれていないが、小説では、花を引き取ってから紋別では淳悟の花に対する性的虐待があったようだ。

二人とも結局は人を殺すのだが、それを肯定する花と、罪の意識に捕われる淳悟。しかし考えてみれば、花の狂気を作ったのは淳悟である。自分が犯した深い罪業を実感し始めれば最後は落ちるところに落ちるしかないのかもしれない。

何したってあれは私の全部だ!と叫ぶところに寒気を覚えるくらいだ。そして私達、子供だったんですねと呟く花の成長と諦観がすごい。これをさらっとして言う演技もいい。これこそ実存主義の行き着くところだ。最後のシーンは、淳悟と花の立場の逆転を表しているのだろうか


流水の上でシーンがいい。非常に緊張感がある。しかし最後のわずかなショットでそれはすぐにCGとわかってしまうが。

ただ指が執拗に描かれているが、なにか物語と繋がらない。性的描写の一つであるが。

浅野忠信はいい役者になっている。影があって狂気に落ちていく男をうまく演じている。花を演じる二階堂ふみの演技に凄みが出ている。今後もすごい女優になっていくのだろう。

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