妄想代理人 Paranoia Agent 2004

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マッドハウス製作の今敏監督によるアニメ作品。なかなか面白いアニメである。物語の流れも素晴らしく久々に楽しめたアニメ作品である。
アニメ映画のパプリカを思い出してしまった。そしたら監督は今敏である。この妄想代理人の監督も今敏である。なるほど。
少年バットは人が生み出した妄想が現実化したようなものである。誰かの精神的な状態に応答して出現しているようにも思える。全体の流れは、社会的な風刺、自虐的(TVアニメ制作など)な題材を加えて面白く作ってある。ただ謎に迫る過程は、楽しくない。何か不思議に真実に迫っているようでもっと真実に迫る過程が必要である。そこが昇華されていないので何か訳のわからない終わり方になってしまっている。登場人物の関連性が最初はあるんだが、最後はその関連性が緩んでくる。そして真実にせまるアプローチも緩んでいる。そこが惜しい。

少年バットは最初意味があって人を襲っているのかと思えたが、最後はかなり暴走している。これも人々の妄想の暴走ととってもいいのかもしれない。

第1話 鷺 月子は、マスコット人形のマロミがヒットして、次回作も期待されているが、なかなか新しい作品ができなくて悩んでいる。そしてそこに少年バットが現れて月子を襲う。

第2話 鯛良優一は自分がクラスの人気者であることを自慢に思っていたが。児童会会長にも立候補していた。そこにライバルが現れた。牛山尚吾である。彼が児童会会長に立候補した。優一は彼を嫌っていたが、一緒に下校した時に牛山が少年バットに襲われる。そして自分が犯人と疑われるようになる。その後自分が少年バットと思われるようになる。最後に少年バットに襲われて、自分が少年バットでないことが証明できてほっとする。

第3話 優一の家庭教師の蝶野 晴美自分は、解離性同一性障害者。まりあは、蝶野 晴美のもう一つの人格であるホテトル嬢。そしてまりあと争っていた蝶野晴美は、少年バットに襲われる。

第4話 蛭川雅美の悪行が判明する。蛭川から情報を得て、風俗の遊びまで斡旋している半田 順次。そこに幹部の真壁 俊介が現れて逆に蛭川を脅すようになる。

第5話 少年バットの話をする主婦達。

第6話 蛭川妙子は、父の蛭川雅美に隠し撮りをされ、それがショックとなる。少年バットに殴られ記憶を失う。蛭川雅美の建てた家は、台風の土砂崩れにより倒壊してしまう。

第7話
猪狩とともに性根バットにまつわる事件を追っていた馬庭光弘は、狐塚 誠 が自殺して職を追われる。そして自分の趣味だった。実は無線マニアで、退職後も無線で情報を集め少年バットを追い続けている。

第8話 自殺志願の3人 かもめ、冬蜂、ゼブラいろいろな自殺を企てるが、なかなかうまく行かない。そこに少年バットが表れる。この話は、全体の流れから離れている。確かに挿入としては良いのだが、この緩んだ流れが最後に繫がると面白かった。

第9話 4人の主婦が本当にあったかわからない少年バットの話をしている。
これは、第5話とかぶっている。そこに面白さを感じない。確かに一つ一つのエピソードは面白いんだが、第5話と同様な主婦のうわさばなしとして同じ流れで片付けなくても良かったかも。

第10話 マロミまどろみの制作スタッフが少年バットの餌食になって行く、しかし本当の犯人は、猿田直行ではなかったのか。これも誰が

第11話 猪狩慶一の妻、猪狩美佐江は、少年バットに狙われるが、その正体を始めから知っているようである。そして自分の中の肉体的、精神的な弱さが出現した少年バットを恐ろしいような精神的な強さではねつける。
ただ、猪狩美佐江の暗さはこのアニメ全体のポップさとは異質でもう少し、明るく仕上げて欲しかった。なにか見ていて別のアニメを見ているようだった。

第12話
馬庭光弘は、ついに月子の過去について知りことになる。十年前にも同様な事件が月子に起きていた。馬庭は、月子の父に出会い。真実を知る。その間にどんどんと少年バットは巨大化し大きな力をつけていた。猪狩慶一は、いつの間にか自分が好きな子供の頃の世界に迷い込んでいる。

第13話
月子は、馬庭に真実を迫られ、猪狩のいる世界に逃げ込む。そこに馬庭も入り、ついに少年バットとの最終的な戦いとなる。

このアニメの内容は、すべてが明らかになっていない。そこもいいんだが、見たものとしては軽いフラストレーション、謎が残る。
そのいくつかをちょっと書いてみた。

月子が生んだ妄想。子供の頃に買っていたマロミを自分の不注意で死なせたことを父に正直に言えず、少年バットが自分を襲った為にマロミが死んだことにした。
今回は、自分が作ったマロミというキャラクターがどんどん世間で人気になるにしたがい、もう一つの妄想の産物の少年バットもどんどん力を増して行った。
どこまで月子が少年バットをコントロールしていたのかはわからない。マロミというキャラクターは、少年バットと表裏一体で、マロミが次第に独立して少年バットを操っていた可能性がある。
謎の老人の正体ははっきりしない。夢告で次回の予告をしているのも関連があるんだろう。昔は手品師だったが、本当は超能力を持っていたんではないかと考えられる。おそらく千里眼、未来が見えたりする能力が備わっていたのかもしれない。第一話では510(月子の住むマンションは510号室)の数字を書き残した
最後に馬庭光弘が、死んだ老人に変わって夢告をしているのに意味があるのだろう。

最後に、士郎正宗の原作攻殻機動隊があるが、そこにスタンド・アローン・コンプレックスという話がでてくる。時にはある事件において実質的な真犯人が存在しない状態が、全体の総意において架空の犯人像を生み出し、その架空の犯人像の模倣者(模倣犯)がその総意を強化・達成するような行動を見せるという独特の社会現象が起こる。なんとなくこの妄想代理人は、こんなことが描きたかったのだろうかと思ってしまうのである。

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