Death Is a Lonely Business 1985 死ぬときはひとりぼっち (audio book)

これは、レイ・ブラドベリィの売れない時代の半自伝小説である。明るい日差しのあるカリフォルニアの暗い影の中で生きている売れない作家がいる。彼は、電車の中で得体の知れない老人に出会う。老人は、嫌な匂いと酒臭く、彼に死ぬ時は、ひとりぼっちだと叫ぶ。その時から彼は、事件に巻き込まれて行く。彼は、バーの帰りに、サーカスのライオンの檻の中に閉じ込められた老人が、檻のまま川の中に沈んで行くのを目撃する。そして彼が以前住んでいたアパートの孤独な老人たちも巻き込まれていく。
読者は、レイモンド・チャンドラー的なハードボイルド、パルブノワールの世界に引き込まれていく。孤独な人たちを殺していく殺人鬼はもしかしたら若い作家、彼自身の不安が具体的にあらわれたものであるかもしれない。そして、彼が未来を掴むことで、その孤独、死から遠ざかったくことが描かれている。
小説の中にはレイ・ブラドベリィの好きなサーカス、回転木馬が出てくる。

1985年に書かれており、レイ・ブラドベリィもまだ現役で小説を書いているのには驚きである。その年老いたレイ・ブラドベリィは、自分の死も感じているはずである。おそらく彼は、売れない作家時代の死を感じていた若き日を思い出し、それを乗り越えて行った時代を書くことによって自分の中に再度生きる力を吹き込もうとしているのではないだろうか

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