幻夜 東野圭吾 2004

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幻夜 東野圭吾舞台は1995年の阪神・淡路大震災に始まる。ここで主人公の水原雅也は、借金返済を迫っていた伯父を震災の直後に殺す。それを新海美冬という女性に目撃されてしまう。

これは白夜行と続きとも言える作品だが、この中に桐原亮司や唐沢雪穂の名前は出てこない。ただ、新海美冬と水原雅也の二人は白夜行と同じような関係性である。今回の描き方は、この二人の関係や出来事が中心である。そう意味では白夜行とは視点を変えて物語が語られている。この小説にも重要な役割として加藤という刑事がでてくる。

今回はもっと美冬の姿が描かれている。しかし新海美冬は、白夜行で作られた特にTVシリーズで作られたイメージではない。巧妙に男を操る手口があまりに冷たく人間性を感じさせない。これでは確かにモンスターである。それでも美冬の心の奥に迫っていないので何かしら氷のような犯罪者を見ているだけの様な気持ちになってしまう。
水原雅也は、彼女の正体に気づいた時に、自分が歩んできた夜の道は、ただの幻だったことに気づくのである。
美の追求と小説の中では美冬は語っているが、本当に何を求めているのかわからない。
もう風と共に去りぬは忘れ去ったのだろうか。いったいどこにタラの大地はあるのか。最後にこの話題はでてくるんだけど。

この小説にある新海美冬が、確かに唐沢雪穂であることはいろいろな情報や彼女の言葉からわかる。"あたしらは夜の道を行くしかない。たとえ周りは昼のように明るくても、それは偽りの昼。"と新海美冬が、水原雅也に言うのである。

東野圭吾の小説は、一つ一つのエピソードが短く綿密に書かれている。そこがリアルさを出している。淡々とした事実の重なりが最後に大きな渦となっていく。登場人物が多くて 一気に読まないと誰が誰だかわからなくなるかもしれない。逆に一気に読むとストーリーのつながりを忘れてしまう可能性もある。
この小説にしても前回の白夜行にしても犯罪小説としては面白いが、なにか読者に対して救いがないのである。どこにも主人公にヒューマンな部分を感じない。読んでいてむなしいのである。これは最後までその感じが残ってしまう。

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