川のある下町の話 川端康成 1953

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川のある下町の話 川端康成 川のある下町の話 川端康成 1953

川のある下町の話
原作 川端康成 1953

1953年の作品である。文章は後期の簡潔で美しい文体になっている。
ここでもまた魅力的で儚い女性のふさ子が主人公である。
インターンの栗田義三は、いままでの観察者よりも行動的な男性であるが、やっぱりいつも女性に助けられている。そう言った魅力的な男性を主人公にすることは多い。

戦後間もない、まだ多くの人々が貧しくその日の生活も苦しい時代の話。
医学部を卒業したインターンもまだ給料がもらえず苦しい生活を送り、貧しい者たちは、生活保護を受けて、バラックで暮らしていた。

この小説はそれなりに運命的な物語で最後まで読み進んでも面白い。
すこし今では古風になってしまった悲しい物語の展開だが、それでも今でも訴えかけるものがしっかりある。
三人の女性が実に上手く描かれている。そして戦後の貧しさ、裕福な生活の対比があり、義三はどちらの生活を選ぶのか迫られている。
最後の展開も川端らしい余韻を残している。義三とふさ子がこれからうまく行くかは読者の考えに任されている。
あの人はあなたところに帰るかどうか、わからないわ。あの人は、自分が愛する人は、みな死ぬと思い込んでいるのよ。


登場人物
義三 貧しい家の出であるが、伯父の援助を受けて医学部を出てインターンをしている。美しい顔貌を持っていて女性から好かれる。
ふさ子 パチンコ屋で働く美しい目を持つ薄幸の女性、川に溺れた弟を義三に助けてもらい、それ以来義三のことが気になる存在となる。
桃子 義三の従姉妹であり、義三に恋をして義三のことを気にかけている。幸せな家庭に育ち夢見がちである、しかし心根は善意に溢れている。
民子 義三の同期のインターン、やはり義三に恋をしているが理知的な女性。
達吉 キャバレーチェリーで働くボーイ。どこか義三に似た風貌をしている。ふさ子と同じように不幸な境遇で暮らしてきた。ふさ子を助けた時の怪我から破傷風になり死ぬ。

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