トイレのピエタ 2015

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トイレのピエタトイレのピエタ 2015

監督: 松永大司
原案: 手塚治虫
出演: 野田洋次郎, 杉咲花, リリー・フランキー, 市川紗椰, 古舘寛治

この映画は、何か芸術的で、ストーリーも素晴らしく本当にいい映画である。手塚治虫が亡くなる前の日記の最後のページに書かれてあったトイレのピエタの構想をヒントに描かれた物語である。

病院で会った女子中学生の真衣を妹にして一緒に医師からの告知を聞く。予後不良のスキルス胃癌と診断され動揺している宏に真衣は一緒に死のうと切り出す。そして一緒にバイクに乗る。
死にいくものの心が淡々と描かれていながら、途中に主人公の慟哭もあり、親の愛情も表現されながら、生きていくことに苦しい少女との出会い、その症状に恋をする。彼女に求めるものは精神的な救いなのである。

今まで宏が完成できなかった絵がいっぱいあったのだが、彼はやっと生きている実感を持って絵を描き続ける。絵を描く目的を見つけ、自分の浄化と昇天のために、トイレの中でピエタを描き続ける。そして彼が描いた絵は、トイレに座ったまま死んでいくのであるが。まさに真衣に抱かれる絵なのである。

プールの中で金魚と泳ぐ真衣の映像は衝撃的に素晴らしく美しい。そして最後のトイレのピエタの絵もすばらしい。真衣の顔が描かれ、仏教的な菩薩像のようでもある。
僕には本当は食道癌の横田も、小児癌で患う橋本拓人もストーリー的には入らなかった気もするのだが、宏と真衣の世界、絵を描く世界があればよかった気もする。

野田洋次郎は今まで予想もしていない運命を知りどうしようもない絶望感とどうすることもできない青年を自然体で演技している。それがまたいい。
杉咲花は、家庭での苦しみをどこにぶつけることもできず焦燥と絶望の中で生きている。彼女のまっすぐな演技がいい。

なぜトイレなのか
トイレに結びつくのは、この副作用の性だろう。嘔吐、下痢が出てくるからだろう。
嘔吐や下痢がありトイレに行って力無く座っているしかない。トイレで暮らすような、このまま死んでしまうような気になるからだろう。
ここで愛溢れる天使に抱かれながら死ねれば、死わせなのかもしれない。

ピエタはイタリア語で、哀れみ・慈悲などの意である。また聖母子像のうち、死んで十字架から降ろされたキリストを抱く母マリアの彫刻や絵を指している。

主題歌は、野田洋次郎のグループRADWIMPSのピクニックである。

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