火の鳥 異形編 手塚治虫 1981

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hinotoriseimei.jpg火の鳥 異形編 手塚治虫 1981

戦国の世(室町時代)。主人公の左近介は本来は女であったが、幼少の頃より父に男として暴力をもって育てられた。その左近介の父は応仁の乱の功績で名をあげた残虐非道の男であり、左近介は、父が病気になった時にそのまま死んで欲しいと願った。そして父が病気を治してくれた頼む八百比丘尼を殺しに行く。

人魚伝説は、火の鳥の話と同じように人魚の肉を食べたものは不老不死の力を授かるという話。その中にでてくるのが八百比丘尼である。手塚はやはりこの話を知っていて、いつかは火の鳥に取り上げなくてはいけないと考えていたんだろう。
ただ、火の鳥の生き血を飲んで永遠の命を得たでは、ただの焼き直しだから、いろいろ構想を練ったのだろう。

左近介は、父が助からないように比丘尼を殺した。しかしそれが罪深きものだったのだろうか?結局殺したの相手は自分なのであるから。火の鳥の因果応報を説く説得力はない。僕は、彼女がもっと罪深きものとして描いて欲しかった。そこが残念である。火の鳥はいつも狂言回しの存在であるが。今回は左近介の運命を説いているだけである。

八百比丘尼:少女が漁師である父親が獲った人魚の肉をそれと知らずに食べてしまったことで、「不死」という逃れられない運命に囚われることになる

人魚伝説は高橋留美子の人魚シリーズを思い出す。
タイムスリップして自分を殺すのは、Predestination プリデスティネーション 2014を連想させる。つまりタイプスリップして自分が自分を殺すのである。
この話では、これが永遠に続くとなっているがそうなのだろうか。ただ別次元の世界で、時間も超越した世界になっている。ただ、これは輪廻である。転生はしていないと思うんだが。そうなれば、彼女が生まれて育って、年老いて自分に殺される限られた時間の一部でしかないはずなのだが。

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