泥の河 1981

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doronokawa.jpg泥の河 1981

監督: 小栗康平
脚本: 重森孝子
原作: 宮本輝『泥の河』
出演: 田村高廣, 藤田弓子, 朝原靖貴, 柴田真生子,

まずこの映画だけでなく原作も素晴らしいんだろうと思ってしまう。
まず子役がいい、板倉信雄、松本喜一、松本銀子の3人の子役がまさに素晴らしい。
そして田村高廣の巧みな演技と藤田弓子の自然な演技が相まって全体にうまく化学反応を起こしている。
戦後の日本、まだまだ日本が貧しい時代、確かに神風景気ではあるが、
米びつの中に手を入れ暖かいと口にするシ―ンは今みても心打つ。

なんというか誰もが子供の頃にこんな経験をしたんではないだろうか。どこか気になる友達、そして友達の綺麗な姉。そして不思議な大人の世界。父と元妻の関係、そして友達の母の仕事。それが幼い頃の信雄にきらきらと記憶に残るものなのである。

タバコ屋のお墓参が、貞子に言う言葉がいい。
死ぬいうもんは、人恋しいものなんや
どこのどの子の目もなんであんなに可愛らしいんやと、人間生き死ににはそないなことを思い出すね。誰も人は1人で育った訳であらへん、みんな、育てられたんや。
という言葉は、話のつじつまがしっかりあっているわけではないが、じわりとくる言葉である。

最後に信雄が見たものは、見てはいけないものだったのか?
喜一は、カニに火をつけて死んでいくところを見せたかったわけでなく、実はお金を落とした償いに自分の母の情事を見せたかったのではないだろうか。ところが信雄の見ていけないものを見てしまった反応を見た喜一には、信雄が遠い存在に思えただろう。姉の銀子は、友人に自分たちの恥を見せてしまった気まずさから母を説得してその場所を去ったのかも。きっちゃ〜んという言葉が最後に耳に残る。

原作の舞台は大阪市の土佐堀川である。



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