薔薇いくたびか 1955

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薔薇いくたびか 1955

監督: 衣笠貞之助
原作: 小山いと子
出演: 若尾文子, 根上淳, 南田洋子, 長谷川一夫, 菅原謙二,

若尾文子の初々しい美しさがいい。これは珍しいことだが。古い時代のあし入れの習慣をテーマにした恋愛映画である。昔の映画らしい、二人が出会い、すれ違いから離れてしまっても互いを思い、そして苦難の状況から最後には結ばれるというオールド映画ファンにはたまらないストーリーである。

この時代は両親から勧められた結婚を断ることができなかった時代であり、あし入れという習慣は、結納だけを済まし夫となる人の所に試験結婚のように同居するのである。籍を入れていないので、嫁ぎ先の家が嫁を気に入らなければすぐに返されてしまう。女性にとっては非常に不利な結婚の形式である。

あし入れ婚は非常に女性にとっては不利なものであるが、この映画では三日で返されたからこそ、この展開があるのかもと思ってしまう。
そして真一郎が出した新聞広告が彼女が返される原因であるが、真一郎はそれに対しては何も思っていない。というか弓子が説明していないのかも。

やっぱり昔の男性にとって大切な貞操と、女性の貞操を守るには不利な状況がコントラストされていて当時の主婦の友社ではかなり人気になったんだろう。そして最初は芸術大学の受験番号しか知らない。なんというか昔の映画の出会いである。

意外と松島光子の弓子に対する淡白な態度がなんとも言えない。それに苦労して受かった芸術大学を結婚ともに辞めてしまう。昔の世情がよく伝わるエピソードである


設定としては少し疑問になるのが、
家の家計が悪い状況になって当時の芸術大学に行けたのだろうか? 田舎でもかなり裕福な家庭だったと思うんだが。

題名の薔薇いくたびかは、
弓子の家には薔薇を育てる花壇があり、それを何度か摘んでいるシーンがある。
そして弓子が市岡家から返された日もその花壇のシーンがあり、弓子が家を出て東京に住んでも、部屋に薔薇の鉢がある。逆境にあっても何度でも美しい花を咲かせることができると言っているのだろうか。

若尾文子は年を取っても若い頃の雰囲気がずいぶん残っているが、試験会場で出会った友人役の南田洋子は、ずいぶん雰囲気が違う。

市川雷蔵が表示では大きく前に来ているが、長谷川一夫と同じようにゲスト出演程度である。

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