婦系図 1962

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婦系図 1962

監督: 三隅研次
原作: 泉鏡花
出演: 市川雷蔵, 万里昌代, 船越英二

婦系図(おんなけいず)の映画化である。
歌行燈1960につづいて泉鏡花の原作の映画で、市川雷蔵主演である。 泉鏡花に描かれる男前で実直で純粋な心を持った主人公は、確かに市川雷蔵がうってつけである。お蔦役の万里昌代の演技が涙を誘う。

幼い頃スリの手伝いをさせられていた早瀬主税は、恩師の酒井の家に引き取られ、ドイツ文学者となる。酒井に隠れて、芸者であったお蔦と結婚した。酒井の娘の妙子は、早瀬が好きだったのだが、静岡の名家の息子・河野英吉との縁談が持ち上がる。 河野家は妙子の素行調査で主税の所にも来るが、その高圧的な態度に怒った早瀬はこの縁談を壊そうとする。偶然巻き込まれたスリ事件に絡んで早瀬は勤め先をクビになり、恩師酒井に、芸者のお蔦と一緒に暮らしていることがわかり、恩師酒井からお蔦と分れろと命じられる。

今回もやっぱり泣かせる話である。泉鏡花の面目躍如である。
演技も素晴らしい、雷蔵はいつもの演技で早瀬のイメージにぴったりだし、お蔦役の 万里昌代の演技もいい。

この映画に有名な場面があるのは見て初めて知った。湯島の境内で、早瀬がお蔦に別れ話を切り出す会話である。
"切れるの別れるのッて、そんな事は、芸者の時に云うものよ。......私にゃ死ねと云って下さい。"
何度もどこかで聞いたけど意味がわからなかったが。そういうセリフだったと初めて知った。どこで聞いたんだっけ、そうか新・男はつらいよの第4作だった。マドンナは栗原小巻だった。

船越英二が若々しい魚屋を演じている。若い藤村志保も本当にちょい役で出ている。

実際に、泉鏡花の妻・すずは神楽坂に桃太郎という名で出ていた芸妓であった。師紅葉は二人の関係をゆるさず、女を捨てるか、師匠を捨てるかとま鏡花に迫った。
二人はお互いを想いながらも泣く泣く離別を決意した。これが、婦系図の湯島天神の下敷きになっている。紅葉の没後、鏡花はすずと晴れて結婚して夫婦仲は非常に良かったということ。

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