風立ちぬ 2013

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風立ちぬ 2013

原作・脚本・監督: 宮崎駿
庵野秀明, 瀧本美織, 西島秀俊, 西村雅彦, スティーブン・アルパート,

単に堀越二郎の単なる伝記を描いた訳ではなく、堀辰雄の風立ちぬのストーリーを混ぜたフィクションとして描かれている。
冒頭からの飛行機のアニメで驚かされる。想像力豊かなアニメである。やっぱり宮崎駿は天才である。関東大震災のシーンも印象的である。地震が伝わって行くアニメも独創性がある。

過去の映画のオマージュもある。女性たちとカプローニが飛行機に乗ったシーンは、エマヌエーレ・クリアレーゼ監督のTerraferma 海と大陸のシーンを思い出させる。それとドイツでの逃亡者の影を建物に移すシーンも映画のシーンである。軽井沢でのスケッチシーンは、モネの日傘の女である。

次郎と菜穂子が出会ったときに語り合うLe vent se lève, il faut tenter de vivreは、ポール・ヴァレリーの詩海辺の墓地の一節で、堀辰雄が風立ちぬ、いざ生きめやもと訳している。

軽井沢での紙飛行機のシーンは微笑ましいんだが、
牛に引かれる飛行機シーンはのどかでありなが、これが人を殺す飛行機である対比でもあるか。
問題になった喫煙シーンだが、おそらくアニメ制作者もかなり喫煙者が多いのかもしれない。アニメーションの制作者としての宮崎駿が、飛行機の制作技師である堀越二郎との共感をもつ、愛煙家なのだろう。

アニメーションの素晴らしさは全く否定できないのに。裕福な家庭に育った次郎と菜穂子。菜穂子の病気は悲劇的であるが、あとは、当時の社会でも特権的な階級の中にいたような二人である。なにか当時の現実と隔絶した人間が、戦闘飛行機を作ってしまったように思えてもしまう。そこが残念である。
とういことで、戦闘機を作ってしまった後悔の念が描かれているんだろうか?菜穂子が夢の中であなたは生きてというほど、堀越二郎は死ぬほど悩んでいたのだろうか? それに、菜穂子が死んでいき堀越二郎が悲しむシーンがなく伝えたいことと、実際に描かれているものにギャップがありすぎる。ということで生きねばという言葉が伝わってこない。

どうしてカプローニが夢の中にでてくるのだろう。なぜユンカスではなくて。これは、スタジオ・ジブリのジブリが、第二次世界大戦中のイタリア・カプローニ社の偵察/爆撃機の名前でもある(CAPRONI Ca309 GHIBLIに由来しているからで、宮崎駿の思い入れがあるからだろう。つまり堀越二郎が、カプローニを好きだったというよりも、宮崎駿が本当に好きだったということである。

全体的にこのストーリーは、宮崎駿の自身のために書かれたものだろう。月刊模型雑誌モデルグラフィックスに自分の趣味のように書いていた内容が、そのまま映画になったのだろう。

アニメの完成度は高いんだが、ストーリーの組み立ては非常に甘さがある。宮崎駿の大人の夢があふれているので、宮崎駿ファンは必見な映画だ。

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