Populaire タイピスト! 2012

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Populaire タイピスト! 2012

監督: レジス・ロワンサル
出演: ロマン・デュリス, デボラ・フランソワ, ベレニス・ベジョ

Populaireは、タイプライターの機種名だそうだ。
素晴らしい映画に必要なすべての要素がある。ウイット、ユーモア、ロマンスが飛び抜けていい。この映画を見ていて、コメディは、人を笑わそうとして笑いがあるわけでなく、自然と笑いがでてくるからみんな幸せになれるのだとあらためて痛感した。

都会暮らしに憧れて、ノルマンディーの田舎から出て来たローズ・バンフィルは、保険会社経営のルイの秘書に応募する。タイプが唯一得意で、試しに1週間雇われるのだが、他の仕事は失敗続き。しかしルイは、彼女のタイプの早さを生かして、タイプの早うち大会に参加して勝つことを就職の条件とする。
ルイは以前の恋人マリーをアメリカ人のボブ・テイラーに取られ、それでも二人と親しい関係にある。しかし内心ルイはボブに対してライバル心を持っていた。それが、何かローズをタイプの早うち大会に出場させるきっかけにもなっていた。

全体のストーリーは、フランス版のマイフェアレディである。
ルイはローズに恋心を抱いているのにちっとも気づかない。ローズは次第にルイに鍛えられながら(いじめられながら?)次第にルイのことを愛するようになるんだけど。

主演の二人が非常にうまい演技をしている。デボラ・フランソワの表情に味がある。すごく親しみやすいし、観客に訴えかけてくる。ロマン・デュリスは、何となくクラシカルなフランス人俳優という雰囲気がとてもいい。

タイプを打つときにすこし服の袖がおちて下着をのぞかせたり、前髪を吹いてあげるなんて仕草は、昔流行ったっけ?フランス流のお色気や茶目っ気がいっぱい出ている。コンテストでも、タイプを打つときの仕草がうまくできている。

ファッションも品があるし、タイプライターのキーの色とネイルの色を合わせたり。タイプライターの色や爪の色は非常にセンスがある。さすがフランス的でこれをうまく使っている。


1958年から1959年が設定。だから第二次世界大戦の話が身近に出ているところも面白い。

1949年ワインがでてくるんだが、ボルドーだろうが、どのシャトーのかわからなかった。

タイプのコンテストはどんな文面だったんだろうか。フランス語のタイプライターと英語のタイプライターではすこし違うはずだし、フランス語の方がスペルが難しいから不利に思うんだけど。フランス語では、タイプライターがQWERTY配列ではなくて、AZERTY配列になってたりするんだが、いつの時代からそうなったかは知らない。


ルイの部屋に張ってある写真がオードリー・ヘプバーンやマリリン・モンローである。その隣に母の写真がある。そして最後にはローズの写真も。


ボブがニューヨークのコンテストの最後のシーンで話す、アメリカ人はビジスネスだけど、フランス人は愛に生きるんだ。というところが何とも面白い。American for Business, French for Love

一本指から5本指で打つようにする練習も面白いのだが、これはスタントを誰も使っていないらしいからすごい。逆に1本指で打つ方が難しいと思う。タイプの練習にピアノの演奏も取り入れている。ドビッシーの月の光を弾くシーンがあるがこれもまたフランス映画らしい。他にも映画の中に使われた音楽がフランス流のおしゃれを追求してよかった。

二人の踊りはもう少し洗練されても良かったような気がする。そこだけがマイナス点。

タイプライターについて

ジャミング(アームの絡まり)があるのがタイプライターだったんだろう。この映画の最後の特許に関連するボール型は、1961年にIBMが IBM Selectric typewriter を発売した。これはタイプアームではなくタイプボールと呼ばれる部品を使っている。


QWERTY配列
英語によく出てくるアルファベットをできるだけ早く打てるように配列されていると思ったのだが、それだけではなくて、タイプライターの技術的な限界から打鍵速度を落としてアームの衝突を防ぐために考え出された配列(TとHのタイプバーを遠くに離す)、タイプライターのセールスマンが、顧客に対して簡単に美しく「typewriter」という単語の打鍵を披露できるようにしたもの(確かに一番上の段だけでタイプライターと打てる。)

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