もどり川 1983

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もどり川 1983

原作: 連城三紀彦
監督: 神代辰巳
脚本: 荒井晴彦
撮影: 木村公明
出演: 萩原健一, 原田美枝子, 藤真利子, 樋口可南子, 蜷川有紀, 池波志乃


ショーケンの絶頂期と言っていいだろう。あの頃見た青春の蹉跌と同じくらいのインパクトがある。この映画の神代辰巳監督は青春の蹉跌の監督でもある。破天荒な主人公の苑田岳葉の人生とショーケンの人生が重なって見えてしまう。それだけでなく、ショーケンの演技が素晴らしい。何か役柄と実生活が重なって見えてしまうほどである。そして当時のそうそうたる女優陣がすべてショーケンと絡みがある。そこもショーケンらしい。

あの時代、売れない作家や歌人は心中騒ぎを起こしては有名になっていったのかもしれないと本当に思えてしまう。

琴江(樋口可南子)に迫る苑田岳葉のシチュエーションが本当面白い。夫のいる家の廊下で、琴江の人力車にのに乗り込んで、琴江の部屋の障子越しに迫り、そして蚊帳のなかで。不貞の罪で牢獄に行き、琴江は売春婦に身を落とす。妻のミネも結核に病みながらすぐに抱いて欲しい。関東大震災の中で、周りが火事の中で野原でセックスをする。
文緒との心中、そして朱子との心中も小舟の上である。彼はこれほどまでに計画的に場所を選んでいる。そして最後は、花菖蒲の演出までも。ただ最後に朱子は苑田岳葉の心中が狂言であるのを見破ってしまう。総ては歌のために女性を求め心中する。最後に自害する苑田岳葉、その時本当に誰を愛していたのかはその時わかるのだが。
それにしても映画でてくる歌は格調高くない。そこが一番がっかりしてしまう。
これは原作よりも映画の方がまさっているのかも。それほどエロティシズムがほとばしっている。
青春の蹉跌の暗さがやだったのだが今では見えるようになってきた。それと同じようなものを感じる。そうした世界を作っている。

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