素晴らしき日曜日 One Woderful Sunday 1947

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素晴らしき日曜日 1947

監督: 黒澤明
出演: 沼崎勲, 中北千枝子, 菅井一郎, 渡辺篤, 堺左千夫

日本の戦後、貧しく若い二人が大切な日曜日を過ごす。戦後の日本の暮らしが垣間みれる。そしてその時代の若者の夢が何だったかも少し感じることが出来る映画である。現代では、何だそんなことなんだ思うかもしれないが、でもよく考えてみれば、自分も若くて貧しい時に何に夢をみていたんだろうかを思い出させてくれる映画でもある。

雄造演じている沼崎勲は二枚目で演技もうまい。昌子を演じている中北千枝子はどこにでもいる少し可愛い子というところ。ほとんどこの二人しか映画には出てこない。この二人の私小説的な映画と言える。
饅頭も高いし喫茶店でコーヒーを飲むのも高い。日比谷公会堂で未完成交響曲の演奏を見ようと思っても先にダフ屋にすべてチケットを買われてしまう。どこに行ってもうまく行かないデートである。結局雄造のアパートに行っても二人が噛み合ない。
そして戦後の荒れ果てた野原で、二人は喫茶店を開く夢を語り合う。なんだそんなものかと、あの頃は、喫茶店を開くのは大きな夢だったのだとしみじみ思わないではいられない。

そして雄造が誰もいない音楽堂で指揮をふる。でも聞こえてくるのは、寂しい木枯らしの音だけである。昌子がどうか私たちに拍手してくださいと叫ぶ。若い二人と共感を分かち合えた観客が拍手すればよい。この時代の映画館では、拍手したんだろうか。アメリカではよくあるけど。どうだったんだろう。そして未完成交響曲が聞こえてくる。

この恵まれない若い二人にあるものは夢と若さである。その若さと夢があれば、何もない所でも雄造が指揮をすれば、奇跡のように未完成交響曲が聞こえてくる。交響曲もまた未完成である。若い二人の夢が現実になるのを願わないではいられない。そこに映画の視点があると思われる。

黒澤映画の"我が青春に悔なし"の日本の戦後をテーマにした続きとも言える作品である。この映画にも、戦後の若もの達が、何もないけど夢をもって強く生きて行く姿を描いているのである。

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