生きる Ikiru 1952

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生きる Ikiru 1952

監督: 黒澤明
出演: 志村喬, 小田切みき, 小堀誠, 金子信雄, 千秋実

人間の心の変化を生き生きと描いている映画である。
前半は市民課長を務める渡辺勘治。
無気力な公務員の生活を送っていたが、自分の身体の変調に気づく。そして医師から胃炎と言われたが、居合わせた患者から胃がんの症状を聞き自分の症状と酷似していることがわかり自分が胃がんと実感する。

自分の病気を息子に打ち明けようとするが取り合ってくれない。自分が愛していた息子からも振り向かれない中で、渡辺は酒を飲む。居酒屋で知り合った小説家と共に今まで経験したことない体験をする。翌日ばったり会った事務員の小田切とよ何度か食事を共にするになる。退屈な公務員生活を嫌って玩具工場で働くとよから刺激を受け渡辺も何か死ぬまでに自分に出来るものがあるのではと思い始める。

後半は、渡辺勘治の通夜に出席した市役所の同僚達である。渡辺課長に対する正当な評価をし始め、次第に自分たちのお役所仕事に対する批判を始めるようになった。

脚本や演出そしてカメラワークが素晴らしい。そして前半と後半のストーリー流れの違いがうまく作りこんである。
最初にいきなり胃のレントゲン写真が見せられる。これも観客があたかも患者で医者から見せられたような感覚にもなる。
市役所に陳情にきた人たちを最初は映さず、役人の返答だけを映す方法も優れている。あたかも観客が役所の人たちからたらい回しにされている感覚を覚える。
最後のブランコに乗っているカメラワークが俊逸である。彼のジャングルジムの横からブランコを映しながら、正面に変わる。横からは寂しそうに見えた渡辺の姿が、正面に変わると微笑みをみせながら心地よくゴンドラの唄を歌う渡辺の表情が映し出される。

志村喬の抑えた演技は一生心に残る演技である。バーでほとんど口を開かないで辛そうな顔をしてゴンドラの唄を歌う姿、死を覚悟して目標に向かって必死に働く姿とぎらっと光っている眼、そして最後の満足した表情でブランコに乗りながら再びゴンドラの唄歌う姿。

小さい頃この映画をみて公務員が嫌いになったのは確かだ。公務員はなるまいと思ってしまった。今もう一度見ると同僚達の変化もこの映画は描いていてここに救いがあたったんだと発見があった。
もう一つは、ゴンドラの唄が好きになったことだった。

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