The Litigators John Grisham 巨大訴訟 リティゲイター ジョン・グリシャム

The Litigators John Grisham 巨大訴訟 リティゲイター ジョン・グリシャム

舞台はシカゴ。主人公のデイヴィットは、ハーバードを出たエリートで、シカゴの大きな法律事務所に勤めていた。しかし重労働に嫌気がさし、精神的にも追いつめられて逃げ出してしまう。泥酔して出会ったのが、フィンリー&フィグ法律事務所である。

フィンリー&フィグ法律事務所は、二人の弁護士と一人の秘書がのみで運営されている。しかし小さくても優秀なブティック事務所と宣伝している。内実は一度も裁判で争ったことはなく、離婚調停,遺言書の作成、交通事故などの事故の賠償金の取り立てなどを主に生業としている。救急車のサイレンがなると、事故があったと思い、救急車を追いかけて行く。飼っている犬の名前はACで、ambulance chaser (救急車を追う者)の略。

法律事務所のパートナーのウォリー・フィグは大きな訴訟で荒稼ぎをすることを夢見て、ついにコレステロールを下げる薬クレヨックスに実は重大な欠陥があると考えて、ヴァリック製薬を相手に賠償訴訟を起こす。その渦中にデイヴィットは巻き込まれて行く。

この小説の中で道化役はウォリーである。ウォリーの愚かさが、笑えるぐらい面白い。こんな弁護士がアメリカにはいっぱいいるだろうか。顧客を得る為には何でもする。病院、交通事故の現場、葬式などにいって仕事を取ってくる。そしてビンゴのカードにも宣伝を出している。

ジョン・グリシャムの描く主人公の弁護士像は、今回はデイヴィット・ゼィンクであるが、いつもやさ男で、正義感に厚く、真面目な男が多い。僕にはいつもなにか物足りない。アメリカの優秀な白人のステレオタイプであり、個性的なところがない。ただ、ジョン・グリシャムのプロフィールを見ると彼にそっくりと感じることもある。

プロットは巧妙に作られていてストーリーの運び方はうまいが、これは今まで使い古されたプロットの組み合わせで、予想がつく展開なので心弾むものはない。途中から、ウォリー、オスカーの戦線離脱は予想通り。デイヴィットに棚ぼたのケースが来るのもつまらない。デイヴィットにはなにかハングリーさがなく、育ちの良いおぼっちゃんで、結局なんとかうまく行くんだと言う所も面白くない。最後にヴァリック製薬の裁判で食い下がる所だけは、さすがジョン・グリシャムと思えて読んでいて溜飲が下がる。

今回は、訴訟を起こして何とか金を儲けたい弁護士がいっぱい出てくる。グリシャムがこの小説の中でこうした弁護士を大いに風刺している。それがこの小説の中心だろう。

追記

全体の単語は平易でわかりやすいが、法律用語、スラングがかなり使われていて理解するのに苦労することもあった。

audiobookのナレーションをしているDennis Boutsikarisは、奇麗な発音でアメリカ英語の典型だろう。読む速度は少し速めだが、発音はクリアで、非常にパーフォマンスが高い。

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