薄桜記 1959 Samurai Vendetta

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原作:五味康祐
監督: 森一生
出演: 市川雷蔵, 勝新太郎, 真城千都世, 三田登喜子

高田馬場の決闘から赤穂浪士による吉良邸討ち入りまでの間に、丹下典膳と中山安兵衛の物語である。
丹下典膳は架空の武士で、おそらく丹下左膳(林不忘原作)から発想を得ているだろう。丹下典膳は隻腕となるが、目は問題ない。

この薄桜記については、五味康祐原作の小説は赤穂浪士の解説が多すぎて小説の流れが壊れているらしい。映画のストーリの方が、丹下典膳に絞られていてストーリはしっかりしている。逆に赤穂の討ち入りなどの関係も実は煩わしいくらいである。

丹下典膳の市川雷蔵と中山安兵衛の勝新太郎。真城千都世演じる千春をめぐる恋の三角関係が描かれている。千春と丹下典膳の祝言により、中山安兵衛の士官は上杉家から赤穂に変わる。これが恋によって大きな運命が変わるところが、原作のテーマなのだろう。
ただ、映画は純愛を貫く丹下典膳と千春の最後にテーマが絞られている。
典膳の留守に、恨みをもつ知心流の5人に千春は陵辱されてしまう。妻を愛していても侍としての意地が、妻を離縁する。そして千春の兄により片腕を切り落とされてしまう。それでも典膳は千春を愛し続けて、妻を犯した5人への復讐を誓う。

丹下典膳と中山安兵衛の二人の剣士が互いに戦うシーンはないが、この映画は殺陣の美しさが光る。勝新太郎の高田馬場、そして市川雷蔵の橋の上、最後の雪のふる境内で。市川雷蔵は陰、勝新太郎は陽のような存在。どうしても市川雷蔵の殺陣に惚れ惚れとしてしまう。ひたむきで怪しげな剣士の雰囲気が素晴らしい。

最後の境内での決闘シーンは、日本らしい様式美の世界である。寒さで凍っている石畳の上での多数を相手に戦う典膳。それも隻腕で、足にけがをしている。寝転がって戦う。雷蔵は、消え行く儚さを美しく演じている。

最後には千春はお雛さまの人形を典膳も大事に持っていたことを知って喜ぶ。そして二人とも切られ死んでいくのだが、夫婦としての愛を貫くところが普通の侍映画と違う所だ。

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