Mauvais sang 1986 汚れた血

  • 投稿日:
  • 更新日:
  • by
  • カテゴリ:

Mauvais sang 1986 汚れた血

監督: レオス・カラックス
撮影: ジャン・イヴ・エスコフィエ
出演: ドニ・ラヴァン, ジュリエット・ビノシュ, ミシェル・ピコリ, ハンス・メイヤー, ジュリー・デルピー

レオス・カラックスの長編第2作。モノトーンの白鳥のシーンから始まる。レオス・カラックスの初めてのカラー映画であるが、その色合いの美しさは驚くべきものである。ピカソのような色使いの地下鉄のシーンから始まる。全篇を通して白黒のトーンに原色で発色のよい赤、青、黄などが素晴らしい美しさで浮き上がっている。人間の肌の色合いも美しい。舞台となるマークの店は、周りを華やかな赤色であしらい、大きなガラスが使われている。ボーイ・ミーツ・ガールでも使われたような趣向である。
パラシュートの上から見下げるシーンは、どうやって撮ったのだろうと思っていたが、なるほど気球を使っていたのか。なんにしてもスタントを使えないシーンだから大変だっただろう。
ジュリエット・ビノシュの表情が素晴らしい。あれほどの感情の表現ができるなんて。微妙な 楽しさ、愛しさ、悲しさ、どれも生き生きとして素晴らしい。口で息を吹いて前髪を上げる仕草が何とも可愛い。飛行場から帰った二人が、話し合うシーンは本当に素晴らしい。どれも詩的である。アレックスが手品をするシーン、アンナを抱いて道路を歩くシーン、そして、シャドーボクシングして、道路にある車を横倒しにするシーン、もう今では使えないが、電話で道を隔てて二人で話すシーンは、どれも忘れない名場面である。翌日のシェービングクリームで二人で遊ぶシーンも名シーンである。車の中で中年男二人と歌を歌うシーンも素晴らしい。

疾走する愛と青春と言っていい映画だろう。その中でもアレックスとリーズがバイクに乗っている走るシーンそしてリーズがバイクでアレックスを追いかけるシーンなども、リーズ役のジュリー・デルピーの美しさが光っている。

映画の一番注目されるシーンのアレックスとアンナのそれぞれの疾走シーンはどちらも素晴らしい。アレックスのドニ・ラヴァンが、デヴィット・ボウイのモダンラブをバックに恋の予感に走り始める。立て板の赤色と灰色流れが、見ている者の目を捉えれて放さない。ドニ・ラヴァンの走り方が本当に素晴らしい。

最後のアンナ役のジュリエット・ビノシュの滑走路を駈けるシーン。ラストシーンである。これも右頬に残ったアレックスの血を右手で触りその感触を確かめながら走り続けるところも忘れられない。

ライムライトのシーン(ライムライトの歌が使われているので)。これはストーリとは全く関係ないように思えるがこれも味があるシーンである。ドニ・ラヴァンと子供の絡みに何とも言えない味が出ている。

ストーリの複雑性はなく、どちらかと言えば俳優の演技や、映像の美しさを見せる映画。総てが絵画のように完成されていので、何度見ても飽きない映画だ。

STBOは、ほとんどAIDSと考えていいだろう。この映画が発表された年、1986年にハレー彗星が来た。彗星の為にパリは暑い夏だったようだ。レオス・カラックス監督の作品であるからいつものように橋の上のシーンもある。映画中重々しくひびくクラッシクは、プロコフィエフのロメオとジュリエット。アレックが口ずさむのは、プロコフィエフのピーターと狼。

リーズ役のジュリー・デルピーは、Before Sunrise、Before Sunsetに出演している。

撮影監督のジャン・イヴ・エスコフィエ(Jean-Yves Escoffier,1950年7月12日 - 2003年4月12日)はフランス・リヨン出身の撮影監督。1980年代にレオス・カラックス作品の撮影を手がけ注目を集める。アレックスの三部作(ボーイ・ミーツ・ガール、汚れた血、ポンヌフの恋人)は総て撮影している。1994年よりアメリカで活動しはじめ、ハーモニー・コリンやニール・ラビュートの衝撃作を数作品手がけるが、2003年に心臓疾患により死去。

レオス・カラックスの作品

ボーイ・ミーツ・ガール Boy Meets Girl (1983)
汚れた血 Mauvais sang (1986)
ポンヌフの恋人 Les Amants du Pont-Neuf (1991)

My Rating(評価): 18/20
アクセス数:81